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コラム「点睛」 印刷新報・2026年8月6日付

 人の命に軽重はないが、このたびの熊本地震でとりわけ胸のつぶれる思いがするのは、一度避難して助かったにもかかわらず、「売上金を金庫に入れてきてほしい」という会社の指示でイオンモール熊本に戻り、爆発の犠牲となった女性の悲劇だ。あれほどの巨大地震の直後に、建物に戻っていいはずがない。職場の論理が正常な状況判断を狂わせたか▼東日本大震災では、避難していながら、自宅に残してきたお金や貴重品を取りに戻ったばかりに津波の犠牲となった方がいた。「なにより命が大事」とはいえ、長年蓄えてきた財産をムダにしたくない心情はよくわかる。それでも、戻ってはいけなかった▼例は違うが、工場作業者の機械への巻き込まれなどの重大事故は、大事な製品を破損させてはいけないと、無意識に力を入れて守ってしまうために起きると聞いた。とっさに逃げること、手を放すことができない。責任感の強い人ほど、製品のために我が身が犠牲になる▼緊急時にあっては、まず「逃げる」「手放す」。日頃から心の中で想定する訓練を繰り返していても、いざとなると至難なことではある。 (銀河)





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