コラム「点睛」 印刷新報・2024年11月7日付
今年観た映画の中のベストは「パーフェクトデイズ」。邦題なら「満ち足りた日々」か。ヴィム・ヴェンダース監督、役所広司主演。主人公のトイレ清掃員平山の、世の片隅にひっそりとありながら展開する小さなドラマが沁みる▼平山は毎日、床で文庫本の頁をめくりながら眠りに就く。その本の一つが幸田文の『木』と知れた瞬間、電気に打たれた。作品には、平山が植物に癒されるシーンが何度も出てくる。猫も愛らしいが、木とともにある生活の清々しさは別ものだ▼『木』は、日本中を訪ね歩き、まさに体当たりで物言わぬ樹木、あるいは樹木のある風景や人と向き合った名随筆。「誰もみる人がなくても、いささかの苦渋もまどいもなく、無心に生を終わる」樹木の美しさに、幸田さんは敬愛の念を抱く。別の著書の対談では、「山の中の老木はどれも杖ついていないよ」という植物学者の言葉に深く感じ入っている▼せわしない日々に心を見失いそうな時は多いが、黙々と立ち続け、静かに終わるいずこの木々たちや平山の存在を思うと、不思議に力が湧いてくる。そこには、希望さえ感じられる。 (銀河) |
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