
コラム「点睛」 印刷新報・2026年7月9日付
水俣に行き地魚の刺身を食したいとずっと思いながら、まだ果たせていない。「宇宙世紀 はじまる にっぽん ひご みなまた」と石牟礼道子が宣言した水俣である。彼女は、公害という言葉は使わない。国と企業による「虐殺」だと断言した▼オウム真理教の麻原彰晃は、水俣から45キロ離れた八代の生まれ。ここでも水俣病申請をした人がいる。顕著な症状である視覚障害を患い、コンプレックスを抱え、やがて教祖に至る。作家の藤原新也は麻原の兄に会い、「隠れるようにして弟の智津夫の水俣病申請をした。当時、申請をすると八代ではアカと後ろ指を差された」との証言を引き出している。もうひとつの虐殺につながる道だ▼患者たちが病よりも辛かったのは、地域での差別や偏見だったという。残された国でいじめを受け、帰国して生活の術がない中国残留孤児と重なる。最も痛苦を味わった者が疎外されねばならない不条理▼今年は水俣病の公式確認から70年。未だに被害者全員の救済は終わらず、不知火患者会は国に訴え続けている。来年3月11日は、『苦海浄土』石牟礼道子の生誕百年にあたる。(銀河) |
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