日付インデックス ⇒最新ニュース記事はこちら 5月29日付 (1面) 全印工連、12月にパリ展示会に出展 22世紀の印刷を世界に発信 経済産業省が全面支援 5月19日付 (1面) ジャグラBBでdrupa速報 現地の映像を無料公開 5月5日付 (1面) DM発送に制限措置 消費者の権利保護強化 4月24日 (1面) 紙値上げ断固反対、 日印産連が反対表明 4月14日 (1面) 枚葉印刷市場の現状と将来予測 日印機工が調査報告書 4月3日 (1面=1) 「印刷と環境」アンケート 紙のムダ憂える消費者、環境ロゴに関心高まる 3月31日 (1面=1) 改正パートタイム労働法施行 「同一労働、同一賃金」を目標 (1面=2) FFGS 新モニタープルーフ製品、新聞協会「特別賞」を受賞 3月27日 (1面=1) 大王製紙が再値上げ、5月21日から15%以上 (1面=2) パチンコ広告規制広がる、チラシ印刷への影響必至 3月20日 (1面) 拡大するPOD市場 3月17日 (19面) 真興社、出版界の業態変革を支援。 ハイブリッドワークフローで自らも進化 3月10日 (1面) 郵便事業会社が電通と新会社 「JPメディアダイレクト」 2月28日 (3面) M&Aにネット有効活用。 円滑な事業継承を支援。 (株式会社会社取引所) 2月25日 (1面=1) 自費出版契約ガイドライン決まる (1面=2) 2007年、ネット広告が雑誌広告上回る 2月18日 (1面) 新生・製本産業ビジョン策定(製本組合連合会)。 8つの製本業変革モデル示す (16面) 曲がり角に立つフリーペーパー 2月11日 (1面) 郵便事業会社、印刷会社との連携を示唆。 「全国規模で協力が必要」(中島執行役員) |
5月29日付 全印工連、12月にパリ展示会に出展 22世紀の印刷を世界に発信 経済産業省が全面支援 |
全国青年印刷人協議会(臼田真人議長、全青協)が企画した「22世紀の情報・色彩表現展」(※本紙5月19日付既報)が、今年12月にパリ・ルーブル装飾美術館で開催される第1回「感性価値創造フェア」(主催・経済産業省ほか)への出展という形で実現することが決まった。 クリエイターと印刷会社のコラボレーションにより、感性価値創造の実践例を世界に向けて発信する。世界の目が注がれる檜舞台で日本の中小印刷業の実力が発揮される。2009年1月に東京・青山で開かれる国内第1回の感性価値創造フェアにも出展し、印刷業の存在価値を一気にアピールしていく。 全青協は「22世紀展」開催の企画書(公募申請書)を19日に経済産業省に提出。23日午前10時から省内の会議室において、メディアコンテンツ課の前田泰宏課長、製造産業局デザイン・人間生活システム政策室の野澤篤也室長補佐ほかと協議した。臼田議長はじめ全青協幹部、全日本印刷工業組合連合会の水上光啓会長および事務局、社団法人日本印刷技術協会の相馬謙一参事などプロジェクトメンバー10名が出席した。 企画書の趣旨は、「真に総合的かつ健全なメディア環境の強化が、将来の地球を担う若い世代、特に子供たちには必要である。この責務を果たすべく、五感に訴えられる印刷物を中心としたメディアの大きな可能性の実証とともに、実体験としての多様な印刷表現を広く社会に認知していただくための教育的なオープンイベントとして企画した」というもの。これを前田課長も高く評価した。 ただし、企画書で想定していたのは国内展の範囲であり、本紙でも報じたように時期も来年3月頃を予定していた。 協議の流れを大きく変えたのは、前田課長からの“逆提案”であった。すなわち、「22世紀展」を今年12月にルーブルから出発させ、来年1月に東京に逆上陸、2009年度のイベントを経て、2010年の上海万博日本館(5月〜10月)につなげる壮大な構想である。 経済産業省では、2008年度からの3年間を「感性価値創造イヤー」と定め、感性価値創造の実現による産業の競争力の強化と国民運動化を目指して、産官学が一体となった重点施策の推進を計画している。 企画の柱となるのが、国内外における「感性価値創造フェア」の開催であり、第1回が2008年12月にフランス・パリ市のルーブル装飾美術館を会場に開催される。さらに、2009年1月23日から29日まで東京・青山のスパイラル&TEPIAプラザで開催される「感性価値創造フェア」で国内での発信を開始する。 この流れに乗るのか、乗らないのか、印刷産業として大きな勝負をかけるのか、かけないのか。フェアの枠取りを考えると即決即断しかない状況の中で、水上会長、臼田議長は前に進むことを決断した。 自動車、ロボットをはじめ日本を代表するモノづくり産業がフェアの出展枠を激しく争う中で、「印刷産業」が食い込んだことはまさに画期的である。第1回「感性価値創造フェア」は、12月12日から21日までパリ市内のルーブル宮・フランス国立装飾美術館で開催される。日仏交流150周年記念事業として、日本人の感性に基づく製品・素材・技・デザインのすばらしさを伝える。 主催は経済産業省、日本貿易振興機構、フランス経済・財政・雇用省、フランス国立装飾美術館。 現在のところ、展示会場は3つのテーマゾーンで構成。6つの個別展示空間から成る団体・産業界の出展ゾーンのうち一つの空間を印刷産業が使用する。スペースは5×6uと限られるが、出展される作品は日本人の“KANSEI”を体現した選りすぐりのコンテンツとなる。いわば日本の威信をかけたイベントであり、地元フランスはじめ各国メディアの注目度も当然高い。 印刷業界側の具体的な運営体制だが、展示会の性格上、全印工連が主催団体となり、全青協が実行委員会を担当する案が有力。社団法人日本印刷技術協会が企画・運営に協力する。 6月にもクリエイター側との具体的なコンテンツ制作交渉に入る。印刷会社との連携により、五感に訴える究極の印刷表現技術を駆使できるコンテンツを制作する。プロフェッショナル部門、アマチュア(学生)部門に分けて公募し、経済産業大臣賞など各賞を設定する。 経済産業省の予算1000万円および関係省庁予算を加えても、なお業界側で数千万円の実費負担は必要であり、資金調達面での課題が残されている。 |
5月19日付 ジャグラBBでdrupa速報 現地の映像を無料公開 |
社団法人日本グラフィックサービス工業会(添田隆男会長、略称ジャグラ)は、5月29日からドイツ・デュッセルドルフで開催されるdrupa2008に合わせ、ジャグラBBで現地からの速報番組を公開放送する。drupa会場に足を運べない人でも、いち早く現地の雰囲気と情報をつかむことができる。ネットを活用した新しい情報提供の手段として期待される。 ジャグラBBは、インターネットを使って業界人に必要な経営・技術・労務・教育情報を配信する動画放送局。これまではスタジオや現地で収録した内容を編集し番組に仕立てて放送してきたが、今回は速報性を重視。メーカーの協力を得て、drupa開幕と同時に現地からの映像を流す。通常は有料であるところを一般に無料公開する。 協力するのは、ジャグラ賛助会員であるイー・エフ・アイ、コニカミノルタビジネステクノロジーズ、小森コーポレーション、桜井グラフィックシステムズ、大日本スクリーン製造、日本アグフア・ゲバルト、富士フイルムグラフィックシステムズ、ホリゾンインターナショナル、リョービ(15日現在)。他に数社が検討中。 各社で自社ブースおよび会場の様子を撮影し、動画ファイルをジャグラへ転送。着信映像をストリーミングファイルに変換したのち配信する。番組は一社15分程度になる。 今回の企画を推進してきたジャグラの吉岡新常任理事は、速報の意義について次のように話す。 「drupaに行かれない大勢の方たちに、なんとか現地の情報を映像で届けたいと考えた。業界を元気づけることにもなる。あわせてジャグラBBのことも業界人に広く知っていただきたい。初めての試みなので不備もあるだろうが、今後、さまざまな場面に今回の方法が応用できる。速報と同時に、映像記録を残す意味もある」 drupa速報は、ジャグラホームページの「ジャグラBB」コーナーでだれでも視聴できる。撮影から日本への送信まで時間を要するため、実際の番組配信は6月1日頃になる。 |
5月5日付 DM発送に制限措置 消費者の権利保護強化 |
政府は、「個人情報の保護に関する基本方針」の改正案を閣議決定した。企業のダイレクトメール(DM)について、本人から発送停止の要求があった場合、企業が自主的に応じるよう求める原則を盛り込んだ。DMの無原則な大量発送に対して行政が制限措置を設けたことで、企業のDM関連業務やマーケティング戦略が見直しを迫られる可能性もある。 内閣の国民生活審議会は、21日に個人情報保護法の運営指針の改正に向けた最終案を固め、22日に首相に答申。25日に閣議決定した。2005年4月の全面施行から3年ぶりの改正である。 個人情報を扱う民間の事業者が講じるべき措置として、新たに「消費者の権利利益の一層の保護」を追加した。 消費者からDM送付停止の要求があれば、企業は保有する個人データの利用停止に応じなければならない。また、個人情報の取得源や取得方法を可能な限り具体的に明記すること、DM発送業者への委託内容の透明化などが盛り込まれた。 法改正や企業への罰則を伴うものではないが、新しい基本方針に沿った運用を求めていく。 日本の個人情報保護条例の厳しさは世界でもトップレベルにある。他の先進諸国に比べ日本のDM通数が伸び悩む原因の一つとなっている(日本人一人当たりの年間DM受取通数はアメリカの約8分の1、ヨーロッパ諸国の約半数)。 今回、発送停止要求への対応という新たなDM規制が加わることで、ブレーキが掛かるおそれもある。 ただ、企業からのDMを受け取らないようにできるMPS(メール・プレファランス・サービス)の仕組みはアメリカやカナダではすでに確立されており、日本だけの特別な措置ではない。必要のない消費者に送付しないことで、健全なDM市場の形成やレスポンス率のアップにつながるという考え方もできる。 消費者の権利保護強化の一方、改正された基本方針では、学校等における名簿作成の取り止めなど行き過ぎた個人情報保護の問題にも触れている。「過剰反応」を改め、法の適切な解釈・運用を促すよう国の行政機関や地方自治体に求めている。 |
4月24日付 1面 用紙値上げ断固反対、 日印産連が反対表明 |
製紙各社の強硬な印刷・情報用紙値上げの動きに対し、印刷業界ではかつてないほど反感が募ると同時に、業績に与える影響について警戒感が強まっている。6月1日からの各社一斉15%以上の値上げ(大王製紙は5月21日から)は、まさに印刷業界の“死活問題”。声高に主張していかなければ、一方的に押し切られるだけの関係がこのまま定着してしまう危険を孕んでいる。 日本印刷産業連合会は、「業界の総意」として値上げに断固反対であることを、11日に王子・日本・大王、14日に三菱・北越、15日に中越パルプ・紀州を訪ね、文書と口頭で伝えた。 14日には代理店3社(日本紙パルプ商事、新生紙パルプ商事、国際紙パルプ商事)と意見交換を行った。 16日には日本製紙、大王製紙の役員から今回の大幅な値上げの理由について説明を聞いた(王子製紙は自社判断で出席せず)。 値上げ理由は、原燃料価格の高騰が続いていることに終始しており、具体的なコスト削減等の自社努力の中身や経営指標は示されていない。「なぜ、この時期に15%以上の値上げなのか」、「なぜ各社一斉なのか」、「なぜ古紙偽装問題が決着したと言えるのか」、疑念は尽きない。 説明資料には、2004年以降の原燃料価格の上昇がグラフで示されていた。一昨年の値上げ、そして昨年7月の10%の値上げで、少なくともこれまでの製造コストアップ分については吸収できたはずではなかったのか。単に原燃料価格が上がり続けているというだけでは15%の根拠はあまりにも薄い。 メーカーの発表を受けて代理店、卸商が本格的な価格交渉に乗り出すのは5月に入ってからと見られる。業界団体としては具体的な価格の話に踏み込めない以上、個々の印刷会社が安易に容認せず、地元で声を大にして窮状を訴え、値上げの理不尽さを明らかにする以外にない。 実質的に顧客への価格転嫁は非常に困難であり、用紙代の値上りはそのまま自社の利益減少につながる。営業利益の平均が2%台といわれる中小印刷業にとって、赤字に転落する会社が続出しかねない。 22日の全印工連理事会で浅野会長は、「製紙会社の市場に対するデリカシー不足が残念でならない。なぜ、値上げしたいのだが、時期をずらすとか、3回に分けて段階的に実施するといった誠意を見せられないのか。今回の件については、どこまでも反対していきたい」と強い憤りを露わにした。 また、15日に開いた日紙商との意見交換会について水上常務理事は、大略次のような要望を行ったことを明らかにした。 ・弱い立場にある業界同士、協力して製紙メーカーに反対していきたい ・値上げせずに済む方法を検討してほしい(発注方法の見直し等、印刷業界側の努力も必要) ・流通側からも値上げに関する明確な資料がほしい ・日紙商から毎週定期的な情報提供をしてほしい |
4月14日付 1面 枚葉印刷市場の現状と将来予測 日印機工が調査報告書 |
社団法人日本印刷産業機械工業会・枚葉印刷機械部会(中島静雄部会長)は、このほど調査報告書「枚葉印刷市場の動向調査/現状と将来予測‐枚葉印刷の価値創造への課題‐」を発表した。情報のデジタル化や新たな生産システムの登場で変貌する印刷市場を踏まえ、今後5年をめどに枚葉印刷機システムの高度化や価値創造の方向性を示した。オフセット印刷のさらなる差別化に向け、多様な用紙やインキを用いた印刷領域の幅広さ、高品質の優位性、小ロット・短納期対応、付加価値の高度化などが必要であること、また印刷機械メーカーは自らを「システムソリューションプロバイダー」と位置づけ、顧客である印刷会社とも「共創の取組み」を図っていくことが重要であると結論づけている。 今回の調査報告書作成にあたっては、主要な枚葉印刷機関連メーカーから9人の委員が参画し、約1年半をかけて調査・分析、将来像についての議論を進めてきた。枚葉印刷機械部会では、昨今の市場環境を踏まえ、次の3つの視点から調査を実施した。 @IT技術の進展による情報のデジタル化、メディアの多様化などにより印刷産業が大きく変わってきた Aオンデマンド印刷機(電子写真印刷、インクジェット印刷等)の普及で印刷市場とその構造が変化し、オフセット枚葉印刷市場と同機械メーカーに影響を及ぼしている B需要業界3団体は、業界ビジョン(全印工連2008計画、ジャグラ・ビジョン2010)、将来市場予測(日印産連)等の報告書をまとめた。これらに対して枚葉印刷機メーカーとしての対応を検討する 報告書の全文(A4版、64ページ)は日本印刷産業機械工業会ホームページに掲載されている。 |
4月3日付 1面 「印刷と環境」アンケート 紙のムダ憂える消費者、環境ロゴに関心高まる |
能登印刷株式会社(能登隆市社長、石川県白山市)は、このほどWebを通じて行った「印刷と環境に関するアンケート」調査結果を発表した。一般の人々が印刷業界における環境対策をどのように見ているか把握する目的で行われたもの。印刷物が環境に与える悪影響として7割の人が「紙・用紙の消費量の増大」を挙げ、強く意識している。印刷物に表示されている環境対策のロゴマークに関しては、3割が「最近の再生紙の偽装問題で気にするようになった」と回答している。 今回のアンケートは、NC北陸ドットコム(事務局・能登印刷)によるインターネット調査として今年2月5日から25日にかけて実施された。対象は国内のインターネットユーザーで、有効回答数は1911名であった。 まず、「最も関心のある環境問題は?」という一般的な質問に対しては、50.3%と約半数が「地球温暖化・オゾン層破壊などの地球環境問題」と答えた。続いて、「ごみ・廃棄物の問題」(24.4%)、「大気・水・土壌汚染の問題」(11.7%)、「生態系破壊など自然保護の問題」(10.5%)となっている。 「チラシや冊子などの印刷物が環境に与える悪影響として、あなたが感じているものは?」(複数回答)では、「紙・用紙の消費量の増大」が69・3%と圧倒的。次に、「化学薬品・廃液などの産業廃棄物の発生」(40.0%)、「インキなどの原料となる石油資源の消費」(32.8%)の順。 印刷業界における環境対策のロゴマークの認知度について「再生紙使用マーク」「FSC(森林管理協議会)認証紙マーク」「SOY INK(大豆インキ)使用マーク」「バタフライ(水なし印刷)マーク」の4つについて質問したところ、「見たことがあり、意味も知っていた」は、再生紙マークが55.7%と最も高く、次いでSOY INKマーク24.9%、FSC認証紙マーク7.0%、バタフライマーク2.7%。また、「見たことがない」は再生紙マーク10.2%、SOY INKマーク54.9%、FSC認証紙マーク66.6%、バタフライマーク89.2%となっている。 「環境に配慮したロゴマーク等が印刷物に表示されているかどうか、気になりますか?」の質問には、36.4%が「気になる」と回答。「特に気にはならない」が30.9%、「最近の再生紙の偽装問題で気にするようになった」が30.2%と分かれており、再生紙偽装問題が一般の関心を呼び起こした結果が出ている。 そのほか、「印刷業界に対しての率直な意見を聞かせてください」では、次のようなコメントが寄せられた。 「印刷業界の環境負荷は他の工業系のものより印象としては低いように感じるが、印刷に使用される紙の原料を考えると環境破壊などの問題は大きいと思う。今回、環境対策のロゴマークにより、業界の環境への取り組みを改めて知って好感を覚えた」〈東京都・女性・40代〉 「古紙再生率の偽装、インクの原料の偽装があって少し不信を持ちました。白い紙よりも、少し汚くても環境に優しい紙を使い、環境に優しいインクを使っていってください」(山形県・男性・20代) 「ネットによる情報が増えてきて、印刷物に頼る部分は徐々に減ってきていると思う。そのぶん、価値ある印刷物、環境に優しい印刷方法にも配慮してほしい。個人的には、一方的に配られるチラシ、広告が減ればいいと思う。非常に資源のムダづかいを感じる」〈東京都・女性・40代〉 「よくポストにチラシが入っているが、不要なものが多い。何かお得なクーポンをつけるなど、すぐゴミにはならないようなチラシなどを作ってほしい」〈福岡県・女性・30代〉 「アンケートにある環境マークは意識したことがなかった。印刷業界が環境対策に取り組んでいても、私たちはほとんど知る機会がなく、とてももったいないと感じた。私たちが選択することができるように、もっと広めてもらえればと思う」〈長野県・女性・20代〉 |
3月31日付 1面 改正パートタイム労働法施行 「同一労働、同一賃金」を目標 |
改正パートタイム労働法が4月1日から施行される。労働条件の明文化や待遇決定にあたっての考慮事項の説明義務、正社員への登用措置等が追加される。また、同一労働同一賃金が努力義務となる。少子高齢化、労働力減少が進む中、雇用環境の整備でパートタイム労働者の能力を有効に発揮することを目的としている。主な改正点は次のとおり。 ・事業主は、パートタイム労働者を雇い入れる際、「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」を文書等で明示することが義務化される。〈改正法第6条〉 ・事業主は、雇い入れ後、パートタイム労働者から求められた時、その待遇を決定するに当たって考慮した事項を説明することが義務化される。〈改正法第13条〉 ・事業主は、通常の労働者と比較して、パートタイム労働者の職務の内容と一定期間の人材活用の仕組みや運用などが同じ場合、その期間について、賃金を通常の労働者と同一の方法で決定することが努力義務化される。〈改正法第9条第2項〉 ・パートタイム労働者と通常の労働者の職務の内容が同じ場合、その職務を遂行するに当たって必要な知識や技術を身につけるために通常の労働者に実施している教育訓練については、パートタイム労働者に対しても同様に実施することが義務化される。〈改正法第10条第1項〉 ・「給食施設」「休憩室」「更衣室」について、事業主はパートタイム労働者に利用の機会を提供するよう配慮することが義務化される。〈改正法第11条〉 ・事業主は、通常の労働者への転換を推進するための措置を講じることが義務化される。〈改正法第12条〉 ※パートタイマー、アルバイト、嘱託、契約社員、臨時社員など呼び方は異なっても、「1週間の所定労働時間が同一事業所の通常の労働者に比べて短い労働者」の条件に当てはまれば、改正法の対象となる。 |
3月31日付 1面 FFGS 新モニタープルーフ製品、 新聞協会「特別賞」を受賞 |
富士フイルムグラフィックシステムズ株式会社(吉田整社長)のモニタープルーフ製品「プレスルームモニタープルーフ(仮称)」が、社団法人日本新聞協会主催の「2007年度技術開発奨励賞『特別賞』」を受賞した。「技術開発奨励賞」は、新たな新聞制作技術の開発に貢献したメーカーに対し、実用化とその開発努力を称え、日本新聞協会技術委員会が表彰するもの。授賞式は3月14日に日本新聞協会で行われた。 「プレスルームモニタープルーフ(仮称)」は、「i-Color QC」のカラーマッチング技術と高精度液晶モニターの組み合わせにより、印刷色見本を安定した色品質で液晶モニターへ表示する、新聞市場向けモニタープルーフ。 新聞社では現在インクジェットプルーファーにより紙面の色校正を出力しているが、印刷品質の一層の品質向上と制作の効率化が求められている。 「プレスルームモニタープルーフ(仮称)」は、印刷工場に届いた降版データを液晶モニターに表示して色見本とすることができるため、色見本を出力し、仕分け・掲示するなどの作業を省くことができる。 また、安定運用に欠かせないプルーファーの色管理もデジタルキャリブレーションで容易に行えるため、印刷品質の向上、安定化にも結びつく。 主な機能と特長は次のとおり。 ・容易なデジタルキャリブレーションで、色ずれしない安定した色再現が可能 ・輪転機脇のモニターへの印刷イメージ送信のみで確認ができるため、色見本用紙の仕分けや掲示の手間がいらず、用紙、インキ等のランニングコストも削減 ・最終降版面のプルーフも迅速に表示でき、輪転機のスタート時に色見本を参照することが可能 ・プロファイルの切り替えにより、ドライダウン前後の状態を表示することが可能 |
3月27日付 1面 大王製紙が再値上げ 5月21日から15%以上 |
大王製紙は、5月21日以降出荷分から印刷・出版・情報用紙、特殊紙の価格を15%以上引き上げると発表した。対象は次の各品種(上げ幅はいずれも15%以上)。 ▽印刷・出版用紙 キャストコート紙、A2コート紙、A3コート紙、微塗工紙、色上質紙、上級印刷紙、中級印刷紙、下級印刷紙 ▽情報用紙 PPC用紙、フォーム・OCR用紙、インクジェット用紙、ノーカーボン紙、圧着はがき用紙 ▽特殊紙 色・白画用紙、ファイル原紙、壁紙原紙、マスキングペーパー、特殊塗工紙、その他色板紙・機能紙 大王製紙に引き続き、王子製紙、日本製紙も近く値上げに踏み切ることは確実と見られる。年明けから再生紙偽装問題の発生で鉾先が逸れていた用紙価格値上げだが、偽装問題の決着があいまいな内に、早くも一方的な再値上げ通告で混沌に拍車が掛かる。 ◆ 業界第3位の大王製紙が先陣を切って、主力の印刷・情報用紙で15%以上という大幅な値上げを打ち出した。昨年7月の10%を上回る上げ幅である。 印刷業界人の中には、「再生紙偽装問題のほとぼりが冷める夏あたりまで値上げはない」と楽観視する向きもあったが、製紙業界の認識は違う。再生紙の問題と用紙値上げは別問題であり、今以上の減収をなんとしても食い止めるために値上げは避けて通れないという極めて強硬な姿勢だ。 「原油価格の高騰」「自助努力の限界」という言葉は、これまで何度も繰り返されてきた決まり文句。最大の需要家に対する説明理由にはなっていない。値上げ発表に際しては常に各社ともほぼ同じ文面であり、個別の経営諸数値やコスト削減施策の具体的なところは一切出てこない。 3月19日に開かれた東京都印刷工業組合の理事会でも、再値上げ問題が取り上げられた。 席上、水上常務理事は、次の三点を挙げて再値上げに対して疑念を呈した。 ・製紙メーカーは合計で120万トンの増産につながる新設備を稼働させる。需給が緩む可能性がある ・メーカー同士の合併が繰り返されてきたが、工場の閉鎖は行われていない。本来、合併は合理化が目的のはずだが、本当に合理化努力がされているのか ・急激な円高が起きている。従来のように原燃料高を理由に当然のように値上げを打ち出すのは通用しないのではないか 浅野理事長も、「印刷メディアに関わる者として、同じテーブルで議論すべき関係にある。それがメーカーの一方的な理由で強引に価格転嫁されるのは到底納得できない」と語気を強めた。 印刷業界としては、日印産連等を通じてメーカーに情報開示を求めていくなど、業界団体の一致団結した行動が求められる。 一時期、双方の歩み寄りの動きが見られた印刷業界と製紙業界だが、いまや完全に冷え切っている状態。価格について交渉するにしても、常日頃の人的な交流がなければテーブルを用意することも難しい。 今後も、印刷用紙価格を巡る問題は何度でも繰り返される。長期的な視野に立ち、両業界で互いを結ぶキーマンを育てていく必要があろう。また、メディア全体における紙媒体の位置づけと将来戦略を研究する共同プロジェクトの設立も必要だ。“点”の部分でいくらジャブの応酬をしても、根本的な打開を図ることはできない。 |
3月27日付 1面 パチンコ広告規制広がる チラシ印刷への影響必至 |
パチンコ店を取り巻く経営環境が厳しさを増している。庶民娯楽を代表するパチンコ関連の広告宣伝物は印刷業界にとって無視することのできない需要であり、その減少が及ぼす影響は大きい。 改正貸金業法の施行や警察庁によるギャンブル性の高い機種の規制強化などで、競技人口の減少につながる動きが続いている。レジャー白書(社会経済生産性本部)によれば、2006年のパチンコ人口は10年前に比べて4割減少した。パチンコ業界の総売上高は95年の31兆円をピークに、2006年は27兆円まで縮小している。パチンコ店運営会社の倒産も増えており、2007年の倒産件数は前年比37%増であった。 パチンコ店にとっては客離れもさることながら、集客のための新台の宣伝チラシなど、広告宣伝そのものへの規制強化が痛い。自治体の規制だけでなく、存続のためにパチンコ店が自ら自主規制しなければならない状況が生まれている。 矢野経済研究所が昨年9月に発表した実態調査によれば、全国26の都道府県で何らかの自主規制が行われているという。媒体別に最も多いのは折込チラシと新聞広告。その他、DM、テレビCM、ホームページなどが含まれる。 自治体の規制では、チラシ出稿を月1回に制限する例が多い。業界では大型チェーンによる系列化が進んでおり、毎週のチラシ出稿も珍しくない。月1回への回数規制はパチンコ店はもちろん、仕事を請け負う印刷会社にとっても痛い。 パチンコ店の広告宣伝の自主規制は、岩手、福島、茨城、栃木、新潟、石川、京都、島根、長崎など全国で広がっている。 自主規制の内容は、各県の遊技業協同組合の取り決めによってかなり異なる。 昨年5月から開始した島根県では、ラジオ、新聞では完全自粛。折込チラシは、新規開店や2週間以上休んでの再オープンに関しては6日間許可。新台を4台以上入れた場合は週に一度出稿できる。12月から開始した福島県の場合は、新聞広告は月2回以内。折込チラシは週1回以内。ただし、新規開店・リニューアルオープンについては、開店日前後各1週間は例外。テレビCMは午前5時からと午後6時からの各3時間を自粛、といった内容。 「多い時で県全体の月間総折込本数の約21%を占めていたパチンコ店のチラシに規制が掛かることは、折込業界にとって深刻な問題」(福島県折込広告社)。他県でも近い状況と推測できる。 読売インフォメーションサービスが今年2月に発表した「2007年首都圏年間折込広告レポート」によれば、業種別分類で世帯別枚数4位の「遊戯・娯楽場」(パチンコ店が主)は前年比11・9%減と大幅に減少した。 パチンコ業界全体の冷え込みに、パチンコチラシ規制の広がりが追い打ちを掛けていると考えられる。不動産など他業種でも、同様の動きが現れそうな気配であり、チラシ印刷を主力とする会社にとっては厳しい状況に突入しつつある。 |
3月20日付 1面 拡大するPOD市場 |
印刷工業会(山口政廣会長)は、「バリアブル印刷の現状と今後の動向」をテーマに3月13日に日本印刷会館で管理者研修会を開催した。富士フイルムグラフィックシステムズ潟fジタルプレス事業部の柳川尚部長が「デジタル印刷はここまで来ている!」、潟<fィアテクノロジージャパン戦略統括部事業開発部の平林利文部長が「バリアブル印刷に未来はあるのか?」と題して講演した。 日本の2006年の印刷産業総出荷額は7兆円を割る状況であり、1997年から連続で減少している。柳川氏は、矢野経済研究所の国内POD市場の成長規模予測を使い、PODに限れば伸び率は2004年から年率15%程度の二桁成長であることを説明。「現在のPOD市場は約2千億円であり、7兆円ある印刷産業全体で見れば10分の1にも満たない。しかし、さらに伸びていくだろうことは数年前から言われており、二桁成長しているのもこの分野だけである」と述べた。 デジタル印刷が求められている背景としては、顧客ニーズの多様化、情報改訂頻度の増加、Web化・電子化の進展、環境問題への対応を挙げた。 紙メディアへの期待を高める手法をクロスメディアと考える柳川氏は、「メディアミックスは、それぞれのコンテンツが適したメディアで最大の成果を得ようというもの。クロスメディアは、メディア同士が連携して相乗効果の最大化を考える手法である。情報処理業のマーケティングは、マスからグループ、そして今後は個人へ向けていかなくてはいけない。ここにバリアブル印刷、デジタルプリントが活かされる」と述べた。例として続きはWebで≠ノ代表されるテレビからWebへの誘導、QRコードによる紙からWebへの誘導など、現在行われているクロスメディアの事例を紹介した。 柳川氏は、「発注者は印刷物に対し、従来の大量に印刷して配布する販促効果を望んでいない。今は消費者に与える効果を追求し、マーケティング力の強化となるコンテンツを望んでいる。バリアブル時代の印刷業は、小ロット多品種を進め、ユーザーの視点で発想すべきだ」と述べた。 平林氏の講演では、日印産連の『日本の印刷産業‐将来市場規模予測』から、2010年、2015年の印刷産業予測を示し、商業印刷、特殊印刷、ソフト・サービスなどの分野が伸びると予測されていることを解説した。平林氏は、「これからの印刷物は、付加価値、付帯サービスが重要になる。Info Trends社の米国のPODによる印刷出荷額の予測は、2011年には800億ドルを超えるとしている。問題は、その出荷額はどの分野が主体なのか。データプリントだけではなく、サービス分野が大きいのだと思う」と分析した。 高付加価値バリアブル印刷については、「現在は文字・モノクロ中心でマスマーケット対象だが、システムの合理化・コストダウンの追求により、今後は写真やイラストの可変、フルカラー品質が可能になり、視覚的訴求力が高まる。One to Oneマーケットに食い込んでいくだろう。ピンポイント訴求のマーケティングツールとして戦略的効果を生む」と予測した。平林氏が高付加価値バリアブル印刷を挙げた理由は、ターゲットに応じた個別訴求と視認性を要求する発注者が多いことにある。そのほか、バリアブル印刷の特徴として、カラーバリアブルと品質検査を紹介。カラーバリアブルは、トランスプロモ(請求書・明細書等と広告媒体を組み合わせる手法)に代表されるように、データベースと連動して画像を選択し、個々のターゲットに違う内容の印刷物を配布できるもの。品質検査については、印刷機内部に高速カメラを搭載し、RIP処理時に作成した画像と高速カメラの画像をリアルタイムで比較検査できることが挙げられた。 インターネット広告の普及から、今後の情報配信は多様化・双方向化をたどると考える平林氏は、「従来の大量生産は、オンデマンド生産に変わってきている。最後には、One to Oneのカスタマイズ生産へと移るだろう。情報媒体が、マーケティングツールとして機能拡大した今、クロスメディア技術やIT技術を活用してビジネスを拡大しなくてはいけない。これからの業態については誰も答えを持ってはいない。だからこそアイデアさえあれば、誰でも取り組むことができる」と展望を示した。 |
3月17日付 19面 真興社、出版界の業態変革を支援。 ハイブリッドワークフローで自らも進化 |
専門書出版社を主な得意先とする株式会社真興社(福田真太郎社長、東京都渋谷区、社員50名)は、早くからデジタルワークフローの導入に着手し、効果的なデータ管理手法で顧客のビジネスを支援してきた。 新たな戦略として同社は、柔軟なハイブリッドワークフローシステムの構築と、在版データ管理サーバーの活用によるトータル支援サービスを展開。出版社の悩みの解決に乗り出した。それにより、高額な専門書でも小部数からの出版を可能にすると同時に、提供する周辺サービスの幅をさらに広げつつある。 ◆高品質RGBワークフローによるオンデマンド自動出力 長引く出版不況にあえぐ出版業界だが、中でも専門書出版社には受難の時代が続いている。もともと出版コストが高いところへもって、販売部数の減少で利益率が落ち込む悪循環。生き残りの鍵は、見込み生産を止めて手持ち在庫をできるだけ減らすこと(オンデマンド出版)、デジタルコンテンツ管理とデータ再利用による製作コストの低減、そしてWebを活用したネットワーク販売やコンテンツ配信(ロングテール戦略)である。 真興社は、これらの要求すべてに応えるノウハウを蓄えてきた。今では、印刷会社としてだけでなく、コンサルティング会社の顔を備える。福田社長(60歳)は、自らパワーポイントの資料を使って顧客にプレゼンテーションするなど、出版業界の業態変革につながる提案を積極的に行っている。 同社は大日本スクリーン製造のPDFワークフロー「Trueflow」を核にシステムを構築している。Adobe Acrobat用プラグイン「Colorgenius AC」と連動。さらに、カラー最適化ソフトウエア「Polished Color Server」によるRGB画像を含むPDF/X‐4の高品質な画像最適化や、RGB画像の多色カラー分解による色鮮やかな広色域印刷を実現している。 オフセット印刷機用データもデジタル印刷機用データもすべてRGBで管理し、サーバー側で一気にPDF処理する仕組みを採る。POD出力(出力機はDocucolor7000)の場合も、通常の印刷機と同じRGBワークフローの流れで自動処理できる点が特長。ページ単位でのRIP処理を行い、出力形態に応じた自動面付が可能である。 福田社長は、RGBワークフローの利点について「RGBは色の再現域が広く扱いやすい。処理が柔軟で、品質も向上する。直しが発生した場合も元データに戻って処理できる」と評価する。 同社では、オフセット印刷機、デジタル印刷機、インクジェットプリンター、デジタル校正機それぞれの色再現領域がほぼ重なり合う高いレベルのCMSを構築している。機器メーカーのリモート診断サービスによる毎日の「健康診断」も欠かさない。測定結果に基づき、わずかなズレもすぐに補正する。こうした日々の地道な努力があって信頼できる安定したハイブリッドワークフローが成り立っている。 ◆在版・改版データ管理サーバーを活用しコンテンツビジネスへ 「当社の業態変革の一つの手段として昨年PODを入れた」と話す福田社長。500部以下の仕事にはPODを提案することで、印刷部数と目的に応じた柔軟かつ低コストの生産が可能になった。 その効果はすぐに表れた。ある大手専門書出版社がPODシステムによる在庫レス出版を高く評価し、真興社との取引を拡大した。2400dpiの安定した出力品質にも満足している。コストと品質のバランスが取れているからこそ、数百部の書籍でも高い定価をつけて利益を得られる。 「今までオフセットとPODの世界は品質の点でまったく別物と捉えられていた。それではお客の心をつかむことはできない。オンデマンド対応と同時に、オフセットに限りなく近い品質が成功の前提となる」と福田社長は話す。 実際の製作では、デジタルデータから直接POD出力するほか、オフセットで刷られた現物をスキャニングして出力する場合もある。また、表紙や口絵だけをオフセットで印刷するなど組み合わせは多彩だ。社内に製本機も備える。 真興社のワークフローでもう一つ特徴的なのが、在版・改版データ管理サーバー「Activo Server」の活用。大容量サーバーにあらゆる在版データを貯め、必要に応じて出力できる体制を整えた。得意先にとっては、真興社の社内にデジタル在庫を持つ感覚で、自社の在庫管理コストをゼロに近づけられる。 書籍だけでなく、たとえば会社案内や販促用印刷物についても同じく、常に最新のデータに差し替えてオンデマンド出力できる。真興社にとっては併せて提案を行うことで、顧客の抱え込み戦略につながる。 他社との差別化を図る手段の一つとして同社では、社内に抱える3人のイラストレーターが大事な役割を果たす。とかく小難しくなりがちな専門書を親しみやすく(売れやすく)するための本文用イラストを自社で作成し、独自のサンプル集を作って顧客に提案している。これらのイラストも日々サーバーに貯め込まれ、同社の貴重なコンテンツ資産となっている。今後もサーバーまわりの増強を図っていく考えだ。 コンテンツビジネスに踏み出した真興社にとって、オフセット印刷機もデジタル印刷機もプリンターも、あるいはWeb配信も出力手段の一つにすぎない。何を選ぶか、どう組み合わせるかはあくまで顧客ニーズが決めること。長年の専門書出版で培った技術とノウハウ、感性にさらに磨きをかけ、顧客にとって最適なサービスを提供していくことを一番の強みと認識し、コアコンピタンスへの集中を図っている。 「オフセット印刷の設備がこれだけ生産性を極めたにも関わらず、安くてもいいから仕事を取ってこいではまったく意味がない。日本もいずれ4000部から5000部程度まではPODがカバーするようになるだろう。見積りではなく顧客の五感に訴えるサービスで勝負していくべき」と福田社長は語る。 かたや生産システム面において同社が目指すのはJDFワークフローによる「プロセスオートメーション」(全工程自動化)。顧客にとっても自社にとってもムダを極限まで排除した理想のワークフローへの挑戦である。 |
3月10日付 1面 郵便事業会社が電通と新会社 「JPメディアダイレクト」 |
郵便事業鰍ニ鞄d通、鞄d通テックは、日本郵便および電通グループ共同による合弁会社「株式会社JPメディアダイレクト」を2月29日に設立した。 出資比率は郵便事業51%、鞄d通34%、鞄d通テック15%。資本金は4億9000万円。本社所在地は東京都港区虎ノ門。代表取締役CEOには中島直樹氏(郵便事業且キ行役員)、代表取締役COOには影島卓氏(鞄d通シニアプランニングディレクター)が就任した。 新会社の企業理念は、新しいダイレクトメディアを開発し、企業の最適な情報伝達と生活者の有益な情報取得をプロデュースし、ダイレクトプロモーション市場の活性化を促すこと。主な事業として、 1.郵便物等の送付手段を活用した効果的な広告媒体の企画、開発、販売業務 2.個人のパーミッションを取得したデータベースに基づく付加価値の高いDMの企画、開発、販売業務 3.ダイレクトマーケティング、広告プロモーションに関するノウハウを活用したコンサルティング業務 などを挙げる。 2月6日のPAGE2008基調講演で中島CEOは、「新会社が新規媒体を展開するイメージを抱いている。地域ごとの特色を出してやっていく。中小DM印刷会社との協業を図っていく」と述べている。 すでにパートナー企業の選定に入っていると見られ、新会社がDM印刷市場に与える影響は大きい。 |
2月28日付 3面 M&Aにネット有効活用。 円滑な事業承継を支援。 (株式会社会社取引所) |
1980年代後半のバブル崩壊以来、日本国内のあらゆる業種・業界で再編、淘汰が進む中、それまでは非日常的であった「M&A」という言葉を耳にしない日が少なくなって久しい。景気後退・少子高齢化に代表される国内情勢の解決を金融緩和・法改正・税制改正といった国家施策が後押しする形で、M&A(合併・買収)が事業承継や企業再編のひとつのツールとして社会的に認知され、かつ活用されてきている。 ここへきて、印刷業界でも企業間のM&Aが目立って増えてきた。廃業・倒産による事業所数の減少が続いているが、中には優秀な社員や技術、優良な設備や不動産を持つ会社も多い。かたや、事業領域の拡大や他社との差別化を志向する印刷会社、そして異業種から印刷事業に進出する会社にとって、これらの会社を承継して新たな成長戦略を描くチャンスが訪れていると言える。 互いのベストマッチングを図り、ノウハウ・技術・人材といった貴重な資産を有効活用することは、中小の印刷会社や印刷業界全体の活性化にとって欠かすことのできない重要なテーマとなっている。 しかし、会社や事業を売りたい、買いたい会社を探したいと思い立っても、誰に相談すればよいのか分らないのが実情だろう。そこで今注目されているのが、インターネットを活用した情報提供サイトである。 渇社取引所(土居慎也社長、東京都港区)では、売り手・買い手の情報を一箇所に集約し、必要な情報を低価格かつスピーディーに提供する。着実にサイトの利用者を伸ばし、M&A案件の実績を築いている。M&Aのコンサルティングを行う蟹BSが、中小企業のニーズに応える事業承継のためのマッチングサイトとして2006年2月に設立したのが会社取引所である。 同社が運営するWebサイトの特長は、その利用料金の安さと信頼性にある。売り手にかかる費用は登録料として初回に1万500円、基本利用料として6ヵ月で1万8900円、6ヵ月経過後の基本利用料は6300円(6ヵ月分)となっている。買い手の登録料金は1万500円。基本利用料は不要で、サイト内の情報閲覧に応じて約1000円から3万円が課金される。 会社取引所には売り手・買い手の他に、会社取引所の登録基準をクリアした仲介会社も登録されている。税理士法人最大手の辻・本郷税理士法人も会社取引所の趣旨に賛同して登録した仲介会員の一社である。 売り手・買い手ともに会社取引所に登録された仲介会員を選任することで実際の交渉・手続きは信頼できる仲介会社の下で進めることができる。 おおまかなサービスの流れは次のようになる。 会社取引所は、売り手から送られた申込・登録に必要な情報を登録する。 買い手は、対象となる相手候補を業種、地域、売上、従業員数などの条件を設定して検索する。条件に一致する売り手企業の中でさらに詳しい内容が知りたい場合は、個別企業のデータ閲覧ができる。ここまでは、すべて匿名情報で、数値もおおまかなレンジで表示される。これは、売り手企業の特定を不可能にするためのものだ。 買い手が売り手に対して秘密保持契約締結のアプローチをした段階で初めて売り手に買い手の実名が開示される。買い手を確認し、そのうえで、売り手が申し出に同意すれば、秘密保持契約の締結を前提として双方とも実名で交渉に臨む。会社取引所のサイトで行われるのは、ここまでの売り手と買い手のマッチングで、実際のM&Aは、選任した仲介会員と協力して進めていくことになる。 同社の森川義之専務は、「当社は特に中小企業の皆さまのニーズを汲み上げたサービスを心掛けています。中小企業の経営者の方々が長い歳月をかけて育ててきた会社を売却することは、決して簡単な判断ではありません。今まで出会う機会すらなかった会社同士が巡り合うことで、ご自身の結晶とも言える会社を引き継いでさらに成長させるようなきっかけを作っていきたい。中小企業性が高い印刷業界にとって利用するメリットはたいへん高いと見ていますので、ぜひ一度ご相談いただきたい」と話している。 調査会社のレポートによれば、経営者が55歳以上の国内の中小企業(約100万社)のうち、約半数の49万社で後継者が決まっておらず、約17万社が事業承継の手段として会社の売却を視野に入れている。 まさに、印刷業界にもそのまま当てはまる現状であり、小規模企業ほど経営者の高齢化も進み、悩みは深刻になっている。 そうかといって、事業承継のために大きなコストをかけられないという中小企業にとって、Webサイトの利用は新しい可能性を秘めたツールとして今後注目されていくだろう。 |
2月25日付 1面 自費出版契約ガイドライン決まる |
NPO法人日本自費出版ネットワーク(中山千夏代表理事) は、2月23日に開催した理事会で「自費出版契約ガイドライン」を決定した。会員はじめ自費出版を行う事業者は、ガイドラインの遵守を表明し、日本自費出版ネットワークへの申請を経て、認定事業者として公開される。 今年1月に自費出版大手の叶V風舎が破産し、自費出版をめぐるトラブルが社会問題となっている。新風舎のケースでは、代金を前払いしながら出版物を受け取っていない著者が1千人以上にのぼると言われる。過去にも、別の大手自費出版業者が訴訟を起こされるなど、問題の根は深い。 日本自費出版ネットワークでは、「実際には会員からのトラブルの相談などはほとんどないが、一部の出版社の問題などから世間一般に自費出版全般への不信感が広がるのは大変憂慮すべきこと。また、最近の消費者の権利保護の流れの中では、自費出版も例外ではなくなってきた」と述べている。 こうした認識の下、第三者による認定という方法により、自 費出版を希望する一般著者・消費者に安心感を与えるという観点から、同ネットワークは4ヵ月にわたる議論を重ねてきた。 トラブルの多くは、著者が自費出版事業者と結ぶ契約とその履行過程で発生している。そこで、自費出版事業者が自費出版を希望する著者と契約を結ぶ際に遵守すべき原則事項をガイドラインとしてまとめた。 日本自費出版ネットワークでは著者に対して、ガイドライン 遵守業者であるか、またはガイドラインに添った沿った契約が行われているかを確認の上、相談・依頼をするよう推奨している。 事業者からの申請に基づいて、毎月1回以上、理事会または運営委員会で審査のうえ、「自費出版契約ガイドライン遵守事業者」として認定する。認定事業者名は、日本自費出版ネットワークのホームページ(http://www.jsjapan.net/)や文書その他の方法で公開する。また、事業者は、自社広告やホームページ、名刺などの媒体上に「遵守事業者」であることを自由に記載することができる。 ガイドラインでは、自費出版契約、遵守事業者の行動原則、法律に基づく消費者保護の義務、情報の開示および個人情報の保護責任義務、自費出版(制作・販売)についての説明義務、重要事項の書面による保存など11項目を定めている。 自費出版契約を結ぶ場合の説明においては、出版物の所有権、出版権の帰属、受託から納品までの期間、編集・デザイン・印刷・製本・配送費用、販売価格、著者に支払う費用の比率、支払い条件などを明確に示すこと、著者に誤解のないよう説明し、十分な理解を得ることを定めている。 日本自費出版ネットワークは、1996年6月に発足し、2004 年にNPO法人の認可を取得した。現在、印刷会社、出版社、編集企画会社、製本会社、プリントショップチェーンなど約120社が加盟。日本自費出版文化賞、自費出版アドバイザー認定制度の実施など、各種の事業を実施している。事務局は社団法人日本グラフィックサービス工業会内にある。 |
2月25日付 1面 2007年、ネット広告が雑誌広告上回る |
電通が20日に発表した「2007年(平成19年)日本の広告費」によれば、2007年(1月〜12月)の日本の総広告費は7兆0191億円、前年比1・1%増。4年連続の増加となった。インターネット広告費(※今回から媒体費+広告制作費で集計)は6003億円、前年比24・4%増と大幅な伸びを示し、雑誌広告費(4585億円)を初めて上回った。「マスコミ四媒体広告費」は前年比2・6%減と、3年連続して前年を下回った。 2007年の総広告費は、日本経済の景気回復を背景に4年連続の増加であったが、伸び率はやや低下した。 新聞広告費が5・2%減、雑誌広告が4・0%減などマス広告の減少が目立つ一方、「フリーペーパー・フリーマガジン」はじめ「屋外」「交通」「展示・映像他」「DM」「POP」などが増加した「プロモーションメディア広告費」(1・9%増)が4年連続の増加となった。 BSデジタル放送などの増加で「衛星メディア関連広告費」(10・8%増)が引き続き伸びた。「インターネット広告費」(24・4%増)は検索連動広告、モバイル広告を中心に拡大。媒体費(4591億円)のうち、検索連動広告が1282億円、モバイル広告が621億円である。 伸びが著しいネット広告は、数年内に新聞広告を抜く勢い。 プロモーションメディア広告の伸びも、ネットと連動した展開がかなり寄与していると考えられる。 2008年の総広告費について電通では、「情報・通信」「家電・AV機器」「交通・レジャー」などの業種の出稿増により前年比101・7%と予測している。 |
2月18日付 1面 新生・製本産業ビジョン策定(製本組合連合会)。 8つの製本業変革モデル示す |
全日本製本工業組合連合会(城所虎雄会長)は、このほど製本業の中期振興ビジョンを策定するとともに、80ページからなる冊子を完成。これを基に、新しい製本業の姿を確立するためのビジョン普及事業に乗り出した。「チェンジ・ザ・モデル2012」と題した製本業の“変革理念”を打ち出すとともに、「8つの変革モデル」と個別企業の取組みのポイントを示した。また、ビジョン実現に向けて組合が取り組むべき「8つのアクションプラン」を具体的に掲げ、方向を明確にしている。ビジョンの中身はかつてない非常に意欲的なものである。 新生・製本産業ビジョン「チェンジ・ザ・モデル2012〜新しい製本業の確立と成長を目指して〜」と題して打ち出された製本業の“変革理念”は次のようなものである。 「長い歴史の中で私たちが育んだ『製本』の技術と文化が、日々進化する情報社会の中でその役割を多彩に広げ、より確かな存在意義を獲得していくために、私たちは新しい情報関連技術との融合や、印刷・出版をはじめとする様々な領域への情報発信を積極的にはかり、時代にふさわしい『価値』を追求しながら、つねに高い顧客満足を実現することで、新しい『製本業』の姿を確立し、成長していくことを目指します」 モデル2012とは、5年後に製本業として生き残り、さらに将来へ向けて成長していくための中期ビジョンを指す。 製本界の“業態変革宣言”とも言うべきこの理念の下、ビジョンの中核となる次の「8つの変革モデル」を示している。 @川上ワンストップ型モデル(フルフィルメント化) A川下ワンストップ型モデル(フルフィルメント化) B高度専門型モデル(専門特化) C商品・技術開発型モデル(高付加価値化) D製本コーディネート型モデル(ソフト化サービス化) E製本業務受託型モデル(アウトソーシング化) F企業連携型モデル(協業化) Gデジタル技術活用型モデル(IT化) これらのうち、ワンストップサービスの確立を目指す@は、製本の上流、すなわちデザイン、DTP編集、印刷へ事業領域を拡大するビジネスモデルである。同じくAは、製本・加工以後の業務を一括して請け負うビジネスモデル。物流業、倉庫業、DM業などへの業務拡大を指す。 Bは、特定の製本分野に専門性を高め、技術的優位性を確立し、受注を集中させるビジネスモデル。Cは、クリエイターの持っている製本加工に関するアイデアと、製本業の実現力を融合し、高付加価値印刷物や紙製品を開発するモデル。 Dは、顧客の製本ニーズに最適な製本会社を仲介するビジネスモデル。製本加工に関するあらゆる相談に対応し、全国の製本会社のネットワークから最適な会社を紹介し、入荷、製本・加工、納品までのQ・C・D(品質、費用、納期)を管理し、一定のマージンを受け取る。 Eは、印刷会社の内製化をビジネスに転換するモデル。高度な製本設備を使いこなせない印刷会社に、一定期間技術者を派遣したり、製本オペレーター教育を請け負う。 Fは、合併や経営統合、協業などを積極的に進めることで、効率的な経営を目指すビジネスモデル。事業規模の拡大や事業領域の補完のほか、設備の共有化、資材の集中購買によるコストダウン、価格競争の回避などを目指す。 Gでは極めて広い可能性が考えられるが、一例を挙げれば、応用範囲がますます拡大する「ICタグ」。装着作業が印刷・製本という最終工程であることから期待は大きい。また、他の7つのビジネスモデルすべてで、IT活用による競争力強化が望める。 具体的なモデルを示したうえでビジョンでは、「一社一社が自分の会社をどう変えるのか『経営ビジョン』を持つことが先決であり、実際にどんな業態を目指すのかは、各社独自の事業戦略に委ねるべきこと」と指摘している。 さらに、全製工連では、ビジョン実現のために組合が取り組むべき「8つのアクションプラン」として、内外に向けた次の8つの施策を打ち出した。 @エンドユーザーに対する製本のPR活動 A印刷、出版業界に対する啓蒙、提案、教育活動 Bデザイン、印刷業界、大学とのコラボレーションの場づくり C業務提携、企業合併、事業売却のサポート D新・製本技能検定制度の確立と普及 E体系的教育研修サービスの実施 F会員への印刷、出版、デザイン業界の情報提供 G製本先進国の製本業界との交流 プランの根底には、製本の魅力や価値を自ら積極的に伝え、具体的なコラボレーションにつなげる努力がこれまで欠けていたという認識がある。個々の企業努力では難しいこれらの課題を組合の機能を使って推進することで、業界全体の活性化と地位向上を目指す。 今回完成した冊子では、製本業を取り巻く社会環境変化、クライアントやメーカーへのヒアリング結果、昨年10月に実施した経営者意識調査を紹介したうえで、個々のビジネスモデル展開のポイントを解説。巻末には18項目から成る経営チェックリストが付く。 なお、経営者意識調査(回答214社)における「突破できそうな新事業領域、新製品分野」(複数回答)の上位5項目は次のとおり。 @その他の(=選択項目にある以外の)特殊製本30・6%A印刷分野への進出17・5%B広開本/ユニバーサルデザイン本13・0%Cブックオンデマンド7・9%Dブログ本/写真アルバム本ほか6・8% |
2月18日付 16面 曲がり角に立つフリーペーパー |
フリーペーパー間の競争が激化している。紙の仕入れや配送、ラック設置などの発行コストの上昇を受けつつ、競合相手はどんどん増え、逆に広告単価は下がる状況にある。 近頃は、首都圏で圧倒的な強さを誇る「R25」も一時の勢いが感じられない。宅配情報誌最大手の「ぱど」でさえ、一部の政令指定都市での発行から撤退を迫られる厳しさだ。ましてや、後発組が市場に食い込むためには、よほどの戦略と我慢が必要とされる。 こうなると、やはり強いのは資本力のある大手企業か、部数はさほどでもないが確かなファンがいる「すき間」の市場、あるいは大手が進出しづらい地方の特定市場ということになってくる。中小印刷業にとっては後者がビジネスの狙い目ではあるが、発行会社の母体が脆弱である場合は充分な注意が必要である。宣伝文句は華やかながら、投下資本の回収には時間がかかるのがフリーペーパーの世界。印刷代の支払いは最後の最後というケースも珍しくない。 混沌とした中から、どんなフリーペーパーが勝ち組となっていくのか。印刷媒体の今後を占う意味では、新聞・雑誌であり、カタログであり、ITツールの実験上でもあるフリーペーパーの動向は非常に興味深い。 リクルートは新たにテレビ情報フリーペーパー「タウンマーケット・ティーヴィー(TV)」の発行を準備している(東京・町田と神奈川・相模原地区でテスト発行)。毎週末に一週間のテレビ番組表と関連記事を組み合わせたタブロイド新聞と、地域の広告・チラシを一緒に配達員が自宅ポストまで届けるもの。アイデアそのものはドイツですでに定着しつつあるテレビ番組情報誌の無料宅配とほぼ類似している。 リクルートは、「無料会員募集」というふれこみで配達を希望する会員(読者)を電話、はがき、インターネットで集めているが、その狙いは同社の次の案内文句がよく表している。 「週末にお得な情報が欲しい方、ご自宅で新聞を購読していない方に オススメの会員型DM新サービスです。」 つまり、新聞を購読していない層、タダで配られるものには関心が薄い層に対して、あくまでも「会員」という能動的な参加形態をとったうえで読者データを収集し、データ分析に基づいて効果的なチラシ、ダイレクトメールを配布していくものである。 地域の全戸に宅配する「ぱど」が折込チラシの需要を狙いながらも苦戦しているが、リクルートは“全戸”を謳わない代わりに高いレスポンス率を期待できる会員制(登録制)の形をとることでマーケットを握る戦略である。 郵便局のタウンメール(宛名のない全戸配布DM)とも競合するリクルートの戦略が、はたしてどれだけ既存のチラシ、DMを奪うのか注目される。 ちなみに、「タウンマーケット」とは、昨年11月にリクルートが開始した電子チラシ配信サービスの名前でもある。郵便番号を入力すると、周辺店舗のチラシ情報が無料で検索・閲覧できる。自分の生活圏やよる利用する店の名前を登録しておくと、情報が更新されるたびにメールで知らせてくれる。登録店舗はすでに7000店近く。店舗側は情報掲載料をリクルートに払う。リクルート恐るべし、と言うべきか。 |
2月11日付 1面 郵便事業会社、印刷会社との連携を示唆。 「全国規模で協力が必要」(中島執行役員) |
2月6日に行われたPAGE2008の基調講演「日本郵便の広告市場参入:ダイレクトプロモーション活性化へ」で話した中島直樹郵便事業轄蒼煢c業統括本部執行役員は、3月までに電通との共同出資で新会社を設立すること、新会社では新たな広告媒体としてのダイレクトメール新商品の開発と受託が事業の柱となること、事業展開にあたっては各地域の中小印刷会社との連携を考えていることなどを明らかにした。新会社の正式発表前ということで口ぶりは慎重だったが、全国の郵便局を営業支店として顧客特性、地域特性に合わせた印刷会社とのパートナーシップ展開を想定していることを匂わせた。 郵便局ではコクヨなど文具大手をはじめ4社との提携で簡易印刷物の受注が昨年から始まっているが、今後ダイレクトメールを中心としたより大規模な展開が予想される。印刷会社が郵便事業会社の戦略と同期してどのようにビジネス提携、参入ができるのか、新会社の動向から目が離せない。 講演した中島氏は、日本の年間一人当たりのダイレクトメール受取通数がアメリカの8分の1、ヨーロッパ各国と比較しても約半数であることから、「日本のダイレクトメール市場は、導入期からまさに成長期に差し掛かったばかり。今後大きな成長が期待される」と市場見通しを述べた。 「民営化を機に新たな収益事業を確立するため、3月までに電通とのジョイントベンチャーを設立する」と明らかにした中島氏は、新会社の目指す事業として、DMリスト提供サービス、DMキャンペーンの企画・運営サービス、新型の郵便メディアの開発などを挙げた。 新会社には郵便事業梶i51%)、鞄d通(34%)、鞄d通テック(15%)が出資する。事業の位置づけは「ダイレクトメディアプロデュース企業」。中島氏は新会社について、「(DMを中心とした)広告に関する緑の窓口機能を提供する。社員12人でのスタートであり、具体的なビジネス展開にあたっては郵便局の力を借りないと無理。各地域の中小DM印刷会社との提携を視野に入れ、地域性に合わせたDM内容やキャンペーン展開を新会社の“売り”にしていきたい」と述べた。 質疑応答では、印刷会社への回答として中島氏から、「地域での特色を重視していく。個別には各支店(郵便局)との連携になるだろう」、「バリアブル印刷の技術は絶対に必要と考えている」といった発言があった。 また、「電通グループほかの広告代理店、印刷会社、リサーチ会社、データベース会社などと広く協業していきたい」と述べた。 |